論文紹介
良いX線写真を撮るために
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良いX線写真を撮るために4
東芝医療用品(株) 技術部
麻布大学獣医学部 菅沼 常徳
取材協力・高野徳考(神奈川県開業)
※本論文は、「InfoVets 1999.4月号」の特集として掲載されたものです
【著者の所属は発表当時のものです】
 

■はじめに
 X線が発見されて以来100年が経過し、獣医学領域においてもその恩恵を有効に利用し、今日の獣医総合画像診断へと発展してきた。なかでもX線診断法は、骨格、軟部組識の形態学的変化を1枚のX線写真から読み取ることが可能であるため、各疾病の診断、治療方針の決定に不可欠な手段として、広く獣医臨床に応用されている。
近年では、動物の高齢化などに伴う疾病も多様化し、X線検査で得られる所見においても様々な陰影が観察されるようになった。このため、X線診断技術もさらに高度な知識が要求されている。
 しかし、X線診断の実際では、高度な読影技術の会得だけではなく、X線撮影技術についても十分に理解を深めていなくてはならない。つまり、正確なX線診断は、適切な撮影方法による質の高いX線写真が伴ってはじめて成り立つといい得る。
 獣医療においては現在のところ、X線撮影の専門技師がいない状況であることから、獣医師自らX線撮影にも精通せざるをえない現状にある。しかしながら、日常のX線検査において、常に診断能の高いX写真が得られているとは限らない現状なのではないだろか。
 そこで、今回の特集では良いX線写真、不適切なX線写真を対比させながら、診断価値の高いX線写真を得るためのポイントについて述べ、その具体な対応策を後編に連載し、詳しく解説する予定である。

■正確なX線診断
 X線診断の目的は、X線写真に投影された生体の情報と獣医師のもつ臨床獣医学的な知識を的確に結びつけ、確定的な結論まで導くことである。したがって、正確なX線診断には以下の条件を満足していることが重要である。

  •  診断学的にも良いX線写真であること
     目的と適応が明確であること
  •  X線撮影技術が適切であり、良いX線写真であること
     診断能の高いX線写真であること
また、X線診断法の診断能は、費用・侵襲・障害について他の検査法と比較評価される。とくに費用は飼主への経済的負担として直接反映されるため重要な要素である。さらに動物への侵襲、被写体および術者に対する放射線障害などのリスクを考慮しなくてはならない。人為的ミスによるX線写真の撮り直し、あるいは読影に不適切なX線写真は、リスクばかりが増大し診断能を著しく低下させる。このため、正確なX線診断には診断価値の高いX線写真を撮ることが最優先されなければならない。

■よいX線写真とは
 良いX線写真を得る目的はあくまでも正確な診断に寄与することである。したがって、X線写真の良否を適切に判断でる知識が必要であり、十分に理解を深めておかなくてはならない。ここでは、その判断材料として良いX線写真の要件を以下に示す。

写真の濃度が適当であること。 X線写真は、写真濃度の微妙な差を観察するため、現像不足による濃度の低下あるいは過度な露出および現像からなる濃度の上昇、またはムラがないこと。
読影に適したコントラストを有すこと。 目的とする組織と周囲に存在する組織におけるX線像の濃淡が容易に判断できる画像がコントラストの良いX線写真と言える。
鮮鋭度が良くボケが少ないこと。 X線吸収が異なる2つの部位がどの程度まで明瞭に区別できるかを言う。X線管球焦点―フィルム間距離などの幾何学的ボケおよび動態ボケ、感材系のボケが少ないX線写真ほど鮮鋭度が良い。
診断に必要な部位が描出されていること。 目的とする組織が他の組織に邪魔されず明瞭に描出され、限りなく実態に近似し歪みや拡大の少ないX線写真であること。
撮影技術上の欠陥がないこと。 目的の被写体における撮影条件、焦点―フィルム間距離、被写体―フィルム間距離の密着、散乱線の除去、保定とポジショニングなどの撮影技術を十分に理解し、適切な操作を行うことであるり、人為的なミスが介在していないこと。
現像処理上の欠陥がないこと。 現像、定着、水洗、乾燥の処理が適切であるり、欠陥がないこと。また、フィルムの出し入れ、暗室の光漏れなども画質に影響を及ぼすため慎重な操作が要求される。


 
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