論文紹介
良いX線写真を撮るために
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良いX線写真を撮るために4
X線装置編−1
東芝医療用品(株) 技術部
麻布大学獣医学部 菅沼 常徳
※本論文は、「InfoVets 1999.9月号」に掲載されたものです
【著者の所属は発表当時のものです】
 

■はじめに
 最近の小動物臨床では、犬・猫のみならずエキゾチックアニマルもX線撮影の対象となっている。また、高齢化等による疾患の多様化に伴い、X線撮影方法も高度な技術が要求されている。このため、X線検査の実際では撮影条件の設定が複雑化し、あらゆる条件に対処できるX線装置が必要となってきた。
 しかし、X線装置はX線を出力する能力が定格により定められていることから、X線撮影方法あるいは撮影対象によっては満足な結果を得ることが困難な場合もある。したがって、現在使用しているX線装置の能力を十分に理解することが良いX線写真を撮るための一つの条件となる。
 そこで今回は、X線装置の種類ならびに特徴についての基本的な知識について概説する。

■X線装置の種類
 X線装置は、小動物専用のX線診断装置をはじめ医用X線装置があり、可搬型X線装置から大型の据置型X線装置まで市販されている。そしてこれらは用途ならびに定格によって分類されている。
 X線装置の能力は、高電圧発生方式及び入力電源、短時間定格、長時間定格によって区分され、定格の大きさに比例してX線装置も大型化してくる。獣医臨床で使用されているおもなX線装置を表1に示す。

X線装置の定格

 高電圧発生方式には、三相全波整流方式、単相全波整流方式、自己整流方式およびインバータ方式がある。また、最近の獣医臨床における利用は少なくなったがコンデンサー方式も使用されている。このうち、獣医臨床では単層全波整流方式で撮影管電流が300mA程度のX線装置がもっとも多く使用されている。

■高電圧発生方式とは
 X線の発生には、X線管球の陽極から陰極に印加される電気エネルギー(管電圧)が数万ボルトないし十数万ボルトが必要となる。しかし、X線装置の入力電源は100Vあるいは200Vの商用交流電源を利用するため、数100Vの低い電圧からX線の変換に必要な高い電圧までトランスにより変圧する必要がある。この変圧を担っている装置が高電圧トランスである。

高電圧発生装置の写真 高電圧トランスを経て二次側に出力される交流の高電圧を直接X線管球に印加すると、交流の不の成分が逆電流となりX線管球に負荷が生じる。また、交流の正の成分は半周期ごとにしか出現しないためX線への変換効率が悪くなる。これらの損失を避ける方法として、高電圧整流器を利用した整流がある。これは交流の負の成分を正の方向に反転させ、正の成分だけを持つ脈動流を形成させる方式であり、この方式を高電圧発生方式という。通常、高電圧トランスおよび高電圧整流器は絶縁油に満たされた鉄製の容器に封入されており、高電圧発生装置として昇圧および整流を担っている(写真1)。




 電気エネルギーをX線に効率よく変換するためには、高電圧発生装置から出力される管電圧の波形が重要になる。入力電源と各高電圧発生方式における管電圧の波形は図1に示すとおりであり、波形の差異によりX線の出力も変化する。
 管電圧波形には、各周期における管電圧波形の最高値を示す山の部分と最小値を示す谷の部分がある。この山と谷の波高値を百分率で表したものを管電圧のリップル百分率といい、値が小さいほどX線の発生効率が良い。すなわち、山と谷の隙間はX線に変換されておらず損失となっている。このため、リップル百分率が小さいインバータ方式および三相全波整流方式は単相全波整方式よりX線の損失が少ないため、効率よく多くのX線を出力することができる。また、自己整流方式においては、半周期毎にしかX線が発生しないため単相全波整流方式よりX線の発生効率は劣ることになる。

 
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