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良いX線写真を撮るために4
X線装置編−2
東芝医療用品(株) 技術部
麻布大学獣医学部 菅沼 常徳
※本論文は、「InfoVets 1999.10月号」に掲載されたものです
【著者の所属は発表当時のものです】
 

■獣医臨床で使用されているおもなX線装置の特徴
 小動物のX線撮影では、心拍、呼吸、体動によるボケの影響を最小限に抑える撮影方法が要求される。したがって、X線装置の選択にあたっては、短時間撮影が可能な大管電流の得られるX線装置が要求されるが、小動物臨床においては、ただ単に大型のX線装置を備えればよいというものではなく、その病院における現状の診療規模あるいは診療内容等を考慮した上で設備することが最も重要と思われる。
 そこで今回は、大型、中型、小型のX線装置の特徴について記載する。

■1.大型X線装置
 大型X線装置は撮影条件の設定範囲が幅広く操作はマニュアル式のため、高い管電圧による胸部高圧撮影、高鮮鋭度のフィルムシステムを使用した高mAs撮影または拡大撮影などX線撮影の目的に適した様々な撮影条件を駆使することが可能である。また、管電圧、管電流および撮影時間などの制御は半導体を使用しているため、X線曝射の精度および再現性は従来(中古)のX線装置と比較して向上している。
 しかし、X線出力が大きいため単相200V電源容量30-50kVAの専用電源設備が必要であり、X線制御装置および高電圧発生装置も大型になる。このため、専有する設置面積が拡大するので設置場所の確保が必要になる。
 また、透視回路を搭載したX線装置もあり、透視管電圧は120kV、透視管電流は最大4mAまで設定が可能である(写真2)。

*撮影条件の設定範囲例 大型X線装置の写真
撮影管電圧: 40-125kVあるいは150kV
撮影管電流: 20-320mAあるいは500mA
撮影時間: 0.01-9.9sec
   
*45kg 秋田犬における胸部側面像の撮影条件例
撮影管電圧: 80kV
撮影管電流: 320mA
撮影時間: 0.03sec
SID*: 100cm
グリッド: 6:1 40本/cm 100cm
(表面材質:アルミ、中間物質:アルミ)等
カセッテ: アルミカセッテ等
増感紙: レギュラー:相対感度200(E-20)等
オルソ:相対感度250(TO-220)等
フィルム: レギュラー:NEW-A、RX-U等
オルソ:SR-G、HR-S等
   
*SID(Source Image Distance):線源受像画間距離
   
 高電圧発生方式には、三相全波整流方式、単相全波整流方式、自己整流方式およびインバータ方式がある。また、最近の獣医臨床における利用は少なくなったがコンデンサー方式も使用されている。このうち、獣医臨床では単層全波整流方式で撮影管電流が300mA程度のX線装置がもっとも多く使用されている。

■2.中型X線装置
 おもな特徴は大型X線装置と同様であるが、X線出力が小さくなるため撮影条件の設定範囲も多少狭くなる。透視回路を搭載したX線装置では、透視管電圧は100kV、透視管電流は1-2mAまで設定が可能である。電源においては単相200V、10-20kVAの電気容量で動作する。
 撮影条件の設定は、マニュアル式あるいはコンピュータ制御によるアナトミカル式を採用した小動物専用のX線装置もある。

*撮影条件の設定範囲例
撮影管電圧: 40-125kV
撮影管電流: 100-200
撮影時間: 0.01-0.1sec
   
*45kg 秋田犬における胸部側面像の撮影条件例
撮影管電圧: 90kV
撮影管電流: 160mA
撮影時間: 0.03sec
SID: 100cm
グリッド: 6:1 34本/cm 100cm
(表面材質:カーボン、中間物質:アルミ)等
カセッテ: X線低吸収カーボンカセッテ等
増感紙: レギュラー:相対感度200(E-20)等
オルソ:相対感度250(TO-220)等
フィルム: レギュラー:NEW-A、RX-U等
オルソ:SR-G、HR-S等

■3.小型X線装置
 全波整流方式の小型X線装置は、管電流が30mA程度であるため単相100V電源で動作し、設備面積も大型X線装置より少ないのが特徴である。通常、固定陽極型X線管球と高電圧発生装置が一体となったモノタンク型なので、大型X線装置のように高電圧発生装置を設置する必要がない(写真3)。
 撮影条件の設定は、マニュアル式あるいはコンピュータ制御によるアナトミカル式を採用した小動物専用のX線装置もある。
 小型X線装置はX線用量が小さいため、高感度の増感紙およびX線吸収の少ないカーボンファイバー製のカセッテ、グリッドの採用またはX線焦点-受像画中心間距離の短縮など撮影方法を工夫することにより、短い撮影時間で臨床的に意義のあるX線写真を撮ることが可能である。

*撮影条件の設定範囲例 小型X線装置の写真
撮影管電圧: 40-100kV
撮影管電流: 20-40mA
撮影時間: 0.01-5.0sec
   
*45kg 秋田犬における胸部側面像の撮影条件例
撮影管電圧: 92kV
撮影管電流: 30mA
撮影時間: 0.05sec
SID: 75cm
グリッド: 6:1 40本/cm 75cm
(表面材質:カーボン、中間物質:アルミ)等
カセッテ: 低吸収カーボンカセッテ等
増感紙: オルソ:相対感度500(TO-440)等
フィルム: オルソ:SR-G、HR-S等
   

■4.インバータ方式X線装置
 近年ではX線装置においてもインバータ技術が導入され、高電圧発生方式に応用されている。インバータ方式は図1(本誌9月号p.25参照)で示したように、管電圧のリップル百分率が小さくX線の損失が少ないため、従来の単相全波整流方式にくらべX線の発生効率が向上し、一般的には約1.6-1.7倍のX線量が得られる。同一のX線撮影条件下における管電流時間積で比較すると、単相全波整流方式で300mA×0.03sec=9mAsを用いていた場合、インバータ方式では200mA×0.03sec=6mAs以下で同一の捨身効果を得ることが可能である。このことにより、術者および動物の被爆低減にも寄与することとなる。
 また、全波整流方式の撮影時間は1/100sec(50Hz)単位の制御であるのに対し、インバータ方式では1/1,000sec単位で撮影を制御することが可能な装置もある。その他の特長として消費電力の低減および小型化などが挙げられ、インバータ方式のX線装置は今後の小動物臨床に急速に普及するものと思われる。
 写真4にインバータ方式の小型X線装置を示す。

*撮影条件の設定範囲(大型X線装置)例 インバーター方式X線装置の写真
撮影管電圧: 40-125kVあるいは150kV
撮影管電流: 20-320mAあるいは500mA
撮影時間: 0.01-9.9sec
   
*45kg 秋田犬における胸部側面像の撮影条件例
撮影管電圧: 80kV
撮影管電流: 200mA
撮影時間: 0.03sec
SID: 100cm
グリッド: 6:1 40本/cm 100cm
(表面材質:アルミ、中間物質:アルミ)等
カセッテ: アルミカセッテ等
増感紙: レギュラー:相対感度200(E-20)等
オルソ:相対感度250(TO-220)等
フィルム: レギュラー:NEW-A、RX-U等
オルソ:SR-G、HR-S等
 
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