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良いX線写真を撮るために
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良いX線写真を撮るために4
X線管装置編−1
東芝医療用品(株) 技術部
麻布大学獣医学部 菅沼 常徳
※本論文は、「InfoVets 2000.1月号」に掲載されたものです
【著者の所属は発表当時のものです】
 
■はじめに
 X線管装置は、X線制御装置および高電圧発生装置を経由してきた電気エネルギーを、X線エネルギーに変換し放出する重要な役割を担っている。また、X線管球から放出されるX線は、良いX線写真を撮るための必要条件である鮮鋭度にも深く関与しているため、その構造および性能を把握し、画質との関係についての知識を深めることが重要である。

 そこで今回は、X線管装置の種類および構造について概説する。

■X線管装置の種類
 X線管装置は、医療分野のみならず工業分野においても使用されており、前者では診断用及び治療用、後者は工業用、分析用として活用されている。とりわけ医療分野におけるX線管装置は、X線撮影技術の多様化に伴いその構造ならびに性能も向上し、現在では一般X線撮影、歯科X線撮影、乳房X線撮影、X線CTなど撮影目的に応じたX線管装置が製品化されている(写真1)。

X線管装置の種類の写真

 X線管装置の分類は以下に示すとおりであり、用途別に大別されている。
  • 診断用固定陽極X線管装置
  • 診断用回転陽極X線管装置
  • X線CT用回転陽極X線管装置
  • X線CT用固定陽極X線管装置
  • 治療用X線管装置
 更に大焦点および小焦点を搭載した多重焦点形、または単焦点形などの陰極側の構造別に細かく分類されている。
 小動物臨床においては、診断用X線管装置のうち回転陽極X線管装置の多重焦点形、あるいは固定陽極X線管装置の単焦点形がおもに使用されている(表1)。

X線管装置の一覧

■X線管装置の構造

X線管装置の構造の写真1.固定陽極X線管
 X線管の内部には陰極(cathode)および陽極(anode)が存在し、高真空(10-7mmHg程度)に保たれたガラスバルブ内に収納されている。陰極は、熱電子を発生させるタングステンフィラメントをコイル状に巻いたものを線状に張り、焦点を形成するための集束電極の内側に取り付けられている(写真2)

診断用固定陽極X線管の構造の写真 また、陰極で発生した熱電子をX線に変換させる部位を陽極という。陽極は、熱伝導を良くするためその大部分が銅で形成されており、その先端にタングステン金属の板(ターゲット)を埋め込んだ形状をしている(図1)。
 固定陽極X線管は、小型の小動物用X線装置および歯科用X線発生装置などに使用されるため、高電圧発生器と一体となったモノタンク型のX線発生器内に搭載されている。
X線の発生とターゲット金属の関係
 X線は、陰極から放出された熱電子を管電圧により急加速させターゲットに衝突させることにより、そのエネルギーがX線に変換されて発生する。しかしその発生効率はわずか1%にすぎず99%が熱に変換されるため、ターゲットは非常に高い温度となる。このため融解点が高く熱に強い金属を使用する必要がある。また、X線の強度はターゲット金属の原子番号の高い金属が望まれる。このことから、タングステンをターゲット金属に使用している(表2)。

タングステンと銅の比較



診断用回転陽極X線管の構造2.回転陽極X線管装置
 基本的な構造は固定陽極X線管と同じであるが、決定的な相違点は回転陽極X線管の陽極が傘状で、ターゲットが高速回転(3,000〜9,000回転/分)する構造になっていることである。これにより、ターゲット面で高温にさらされる部分が常に移動するため熱電子が衝突する実面積は増大する。したがって、陽極にに蓄積できる熱の容量が固定陽極X線管より多くなるので数百mAの管電流を印加することが可能となる(図2)。
 ターゲットには、タングステンを使用したものと陽極の熱容量を増大させる目的でタングステンとモリブデンを張り合わせたものがある(図3)。

 陽極はおもに、ターゲットとそれを支持する主軸および回転に必要なロータ、ベアリング、ステータコイルで構成されている。

回転陽極X線管のターゲットと断面

 X線管は、軽合金製のX線管容器に収められており、電気的な絶縁および冷却の目的で使用する絶縁油とともに封入されている。また、X線管容器の内壁にはX線を遮へいするための鉛が張られている。このようにX線管容器内に組込まれたものを総称して一般にX線管装置としている。
 
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