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良いX線写真を撮るために
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良いX線写真を撮るために4
X線管装置編−2
東芝医療用品(株) 技術部
麻布大学獣医学部 菅沼 常徳
※本論文は、「InfoVets 2000.3月号」に掲載されたものです
【著者の所属は発表当時のものです】
 
■はじめに
 X線写真上の鮮鋭度は、おもにX線管球の焦点のサイズ、被写体の動き、被写体の形(大きさ)および感材系(増感紙、X線フィルムなど)に依存している。このうち、焦点サイズおよび被写体には画像を構成する幾何学的な関係があることから、ボケ(半影)ならびに拡大が発生し、鮮鋭度を低下させる要因となっている。

 そこで今回は、ボケおよび拡大の発生とX線管球の焦点との関係について概説する。

■X線写真のボケとは
X線写真ボケの例 X線写真のボケとは、フィルムに投影された各臓器の辺縁のシャープさが失われ、ぼやけた半影の状態にあることをいい、焦点と被写体がなす幾何学的なボケおよび被写体の体動(心拍動、呼吸など)による動態ボケが原因の一つに挙げられる(写真2-b)。  小動物臨床におけるX線撮影では、動物の呼吸あるいは体動などの制御が困難なことから、幾何学的なボケと動態ボケの総和をボケとして捉えることが肝要である。通常、ヒトの目がボケを認識できる大きさは、半影の幅が0.3mm以上といわれている。
■幾何学ボケの発生
 図1-aに示すように、被写体に対しどの部位においても垂直に入射するX線であれば、透過像にボケおよび拡大は発生せず実物大に描写される。しかし、実際のX線撮影におけるX線の発生は焦点からであり、撮影距離が100cmに固定されているため、図1-bのごとく円錐状(四角錐)に放射されている。ここで焦点をきわめて小さな点として考えた場合、被写体を透過した像は実物より拡大して映し出されるが、ボケは発生していない。それでは、ある長さを持つ焦点を使用した場合はどうなるのであろうか?

 図1-cのとおり、焦点の両側から発生するX線も勘案すると、図1-bの透過像の辺縁に半影となる帯を形成することになる。つまり、焦点がある長さを有することによりボケは発生する。
焦点の大きさと透過像の関係の図


■幾何学ボケの大きさを知るには
 幾何学的ボケの大きさは、焦点、被写体およびX線フィルムの立体的な位置関係を数値化することにより容易に知ることができる。

焦点の大きさとボケの関係の図 通常のX線撮影における焦点、被写体およびX線フィルムの位置関係は図2で示すとおりである。ここに焦点サイズ、焦点-被写体間距離および被写体フィルム間距離を次の数式に当てはめることでボケの大きさを求めることができる。

 H=F・b/a
 F:焦点サイズ、S:被写体
 B:透過像(本影)、H:ボケ(半影)
 a:焦点-被写体間距離、
 b:被写体-フィルム間距離

 したがって、ボケを極力小さくするためには以下の方法が挙げられる。
 (1)焦点サイズをできる限り小さくする。
 (2)被写体-フィルム間距離をできるだけ小さくする
 (3)焦点-フォルム間距離をできる限り大きくする。


■焦点サイズの違いによるボケの比較
 ここでは、焦点サイズのみに着目し、その違いがどのように画質に影響を及ぼすかを試みた。

 なお、焦点サイズの影響を観察するため、被写体-フィルム間距離をできる限り近くなるよう密着撮影で行った。また、被写体はボケの状態をわかりやすくするため使用した(表1)。

ボケの理論値

 その結果、X線写真上では両者に大きな差は認められず、焦点サイズの違いによる影響は少ないことがわかった。つまり、被写体-フィルム間距離が小さい密着撮影においては、b/aの値が小さくなるため焦点サイズが変化してもボケ(H)はヒトの目で認識できるほど大きくならないためである。しかし、X線写真上および理論面からみても骨標本1が鮮鋭度に優れていることはいうまでもない(写真1-a、b)。
骨標本のX線写真
 
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